政治部 伊集院敦(12月6日)>> 過去記事一覧米景気後退懸念の高まりから、朝方は一時98円56銭まで上昇したが、ドル売りが一巡すると99円台まで戻した。大手銀エコノミストは「当面はドルが売られやすい状況が続く」とみている。政治部 関口圭(8月28日) 9月20日の自民党総裁選まで残り1カ月を切った。圧倒的優位を固める安倍晋三官房長官への支持を決めた伊吹派、二階派。自主投票となった津島派、山崎派。総裁候補を持たない各派の対応も出そろってきた。15人の小所帯である高村派も全会一致で「安倍支持」を決めた。 「我が派は4月に『安心と夢のある日本』という政策を提言した。安倍さんを推薦することが、安心と夢のある日本を作ることにつながるのではないかと(意見)集約された」――。高村正彦会長は27日、総裁選への派としての対応を協議するために長野県軽井沢町で開いた派閥研修会を終え、記者団にこう語った。つい先月あたりまでは「このまま安倍の1人勝ちの状態で良いのか」といった慎重論も派内に根強かったが、この日、派内には安倍支持への異論は消え、研修会は派閥としてのまとまりをアピールする儀式となった。 6月の設立総会で90人を超す出席者を集め「安倍優位」の流れを後押しした自民党中堅・若手の会「再チャレンジ支援議員連盟」。会長を務める山本有二氏(衆院当選6回)は、何を隠そう高村派の中核議員だ。3月中旬。山本氏は赤坂のビルの一角にある日本料理店で、安倍側近の菅義偉総務副大臣の橋渡しで安倍氏と会談した。「総裁選を途中で辞めることはしないか」「負けてもやるか」との問いに安倍氏は「絶対辞めない。どんなことがあってもやる」。「よし、やってやろうじゃないか」。山本氏は安倍氏に賭けた。 「今回の総裁選はあくまで“超派閥”で取り組まないといけない。戦後生まれの総理総裁が初めて誕生しようとしているんだ」――。高村氏が腹を固める5カ月も前に安倍支持で走り出した山本氏の発想が「脱派閥」であるところに、高村派としての苦しい事情がある。 高村派は、三木武夫、河本敏夫が興した派閥の流れをくみ、党内で唯一、一本の系統を保つ。1974年には三木氏が総理総裁に就任し、政界のキャスティングボートを握った時期もある。高村氏も前回2003年の総裁選に出馬。結果は4人中最下位ながら、派閥所属議員数を大幅に超える議員票を獲得した。高村氏には「基礎票と得票数を比べれば私が最も伸び率が高い。主張した政策が広く支持を得たからだ」との自負がある。 だが、この総裁選後に高村派のホープの1人だった野田聖子元郵政相が「活動の幅を広げ、派閥横断のブリッジ役になりたい」と高村派を離脱した。昨年の衆院本会議での郵政民営化関連法案の採決にあたっては、高村氏が採決を棄権。選挙後の閣僚人事で高村派に大臣ポストは回ってこず、「高村派の戦略が見えない」と皮肉られ、派の結束が揺らいだ時期もあった。山本氏は派閥離脱こそしていないが、今回の行動は野田氏のそれをほうふつとさせ、派閥の形骸化を印象づけた。 小泉純一郎首相の政治手法とは微妙な距離を置いてきた高村氏が「小泉改革の継承者」と目される安倍氏を支持する上での最大の懸念材料は、総裁選で焦点となるアジア外交だった。「中韓両政府に言われて首相が靖国神社参拝をやめる必要はないが、近隣諸国の国民感情にも配慮するべきだ」が持論。自らも外相時代は靖国参拝を控えてきた。 だが、安倍氏は官房長官でありながら靖国神社に参拝した。中国や韓国に対する強気な発言も、アジア外交面では懸念材料と映っていた。だが、高村氏は1カ月ほど前に安倍氏と会談。日中友好議員連盟の会長も務める高村氏は安倍氏に率直に懸念材料をぶつけた。高村氏は27日、記者団に「安倍さんと直接話をして、相当程度懸念は払拭(ふっしょく)された」と述べ、安倍支持の理由を強調してみせた。山本氏ら派内の「安倍支援組」の活動が勢いを増すなかで、安倍氏の外交面での懸念材料が払拭されれば、もはや高村氏が派をまとめて「出馬」を選ぶ道はほとんどなかったといえる。 「勝ち馬に乗る」決断をした高村派にとって、勝負は総裁選後の人事だ。永田町では早くも「安倍政権誕生なら山本氏入閣」などと取りざたされている。しかし派閥横断の枠組みで安倍氏を支援した山本氏を「高村派枠」と計算しては理屈が合わない。山本氏の去就とは別に閣僚ポストを確保できるかどうかが、高村派の関心事だ。もっとも、派閥の影響力低下が一段と鮮明になる総裁選後に、派閥主導の人事が期待できるのだろうか。それは「安倍支持」を打ち出した各派が同じように感じている不安に違いない。日中間の物騒な話がたびたび耳に入る。「中国内の仲間から『日本は中国とまた戦争をするの?いま日本に行って大丈夫か』という電話があったんです」。日本滞在10年以上になる中国人実業家の言葉だ。これだけなら、そんなバカな、と聞き流す。だが、数年ぶりに来日した日本を良く知っているはずの中国人研究者までも「向こうにいると、日本と戦争になる、と半ば本気で心配しました」。 あるはずのない「戦争」が話題になる。なぜなのか。まずは昨夏、中国で開催したサッカー・アジアカップの反日騒動。中国内でも、北京で日本大使館車のガラスまで壊したのは「度を超している」という思いがあったところに、中国原潜による日本領海の侵犯事件まで起きる。続いて日中首脳会談での激しい言い合い。中国が既に「謝罪」した領海侵犯事件の事実さえ公式報道できない不自由な国だけに、「日本の怒り」がインターネットや口コミで、一定の時間をかけてやり取りされるうちに大げさに伝わる。市井では「ただでは済まない」「日本がそうなら、こっちにも考えが」という負の連鎖を誘う。1900年の清末の北京。滅洋を叫ぶ義和団が外国人らに危害を加え、日本とロシア中心の8カ国連合軍に踏み込まれた。その歴史の亡霊がいまだに徘徊(はいかい)しているようだ。 中国で日本を巡る言論を形作るのは公式報道、ネット情報、当局の内部文書……。そこには小泉首相の靖国参拝、ODA打ち切り論、憲法改正、自衛隊の海外派遣、ミサイル防衛での自衛隊法改正、侵略を美化する歴史教科書など、対日警戒論が溢れている。もちろん日本の防衛費の3年連続減少などには触れないため、極端な日本像が一人歩きしがちだ。 歴史認識などを巡る中国の「対日新思考」論が事実上、消えたのもこうした流れにある。2002年秋以降、元人民日報評論員の馬立誠氏、人民大学の時殷弘教授らが提起したが、反対陣営から「中国人の感情を代表しない」「害ばかりで益なし」という批判の集中砲火を浴びる。その後、新思考の擁護者は現れず、すでに論争さえない。日本とのさや当ての最中に、敵に塩を贈るのか、という雰囲気だ。 03年には清末の近代史を扱ったテレビドラマでも新思考が登場した。国営中国中央テレビの「走向共和」は、日清戦争などに絡み、長く売国奴のレッテルを貼られていた李鴻章や袁世凱の肯定的な面に光をあて、敵方の明治天皇の描き方にも新味を加えた。04年以降、潮流が変わる。領土拡大で強国を築いた漢の武帝のドラマ「漢武大帝」がヒット。発展する大国、に自信を持ち始めた若い世代に訴えかけたのが成功の理由という。 「大国としての自信」には根拠がある。2004年の貿易統計の劇変もその一つだ。中国側によると中国の年間貿易総額は日本を抜き世界3位に踊り出る見通し。日本は長い間、中国にとって最大の貿易相手だったが、04年は3位に後退。逆に日本から見ると、戦後一貫して最大の貿易相手だった米国が、その地位を中国に譲った。中国が突然、日本の命綱を握った状況は両国民の感情に複雑に影響し、中国側では「日本など取るに足りない」という優越感も生まれる。 とはいえ、その自信は未成熟。大国ならではの寛容さも持ち合わせていない。なぜなら主な担い手が20―30代という特別な世代だからだ。彼らは、日本の戦後の経済発展を十数年に圧縮したような異常な高度成長下で学生時代を過ごし、一足飛びに豊かさを手に入れた。例えるなら、共同電話が1台ある長屋で白黒テレビを見ていた子供らがタイムスリップ。携帯電話と、IBMブランドを持つ「連想」の高性能パソコンをつないで株を売買している、という感覚だろう。 不安定な大国意識は、時に民族主義の衣をまといながら先鋭化する。戦争体験がない彼らは、抗日や抗米の歴史教育によってバーチャルなイメージを膨らませる。特殊なインターネット環境が拍車をかける。中国では電子メールさえ管理・検閲され、共産党独裁を揺るがしかねない場合、逮捕もある。半面、規制を受けにくいのが、表向き中華民族の結束を掲げる論調だ。外国人と直に接することがない人々ほど、その矛先が日本に向かいやすい。 日本も経済面の自信が揺らぎ、欲求不満ぎみ。いつまでも中国から文句を言われる筋合いはない、という嫌中感情は根強く、書店の店頭にも中国に厳しいタイトルの書籍が並ぶ。政界では、北朝鮮に加え中国にも毅然と対処することが「ポスト小泉」の条件といった空気だ。 だからといって中国の人々が「戦争」まで思い起こすというのは飛躍であり、やりきれない。冒頭に登場した中国人らも、自ら今の日本社会を観た後は「やっぱり日本人は冷静。安心した」「戦争なんかあり得ない」と納得するのだから。だが、いつまでたっても、それが中国人全体の共通認識にはならない。戦後60年を経て、なお残る大きな認識の差。日中が普通の国と国の間柄になるのに、あと何年かかるのか。トップ同士の決断で一気に「和解」を実現した日韓の例もあるのだが。動画と静止画、テロップを同時に表示可能。コンテンツの更新を手軽に行える「USBメモリー転送機能」を採用。USBメモリーから本体のSDカードへ、新しいコンテンツを一括転送できる。音量や電源などのスイッチ操作をいたずらから保護する機能を搭載。価格は3万5000円前後。31日発売。4月13日(日)9時、阪急川西能勢口駅集合。釣鐘山、石切山、中山縦走路、清荒神駅へ。約15キロ。300円。雨天中止。やまびこ2000の安東さん(090・4304・0267)。
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