2008年03月26日今年2月末に就任した李明博(イ・ミョンバク)大統領の政権運営の安定をかけ、少数の保守系与党ハンナラ党が過半数を確保できるかが最大の焦点になる。 またイスラエルとアラブとの戦争が始まっている。今回の相手はパレスチナ解放戦線ではない。ヒズボラである。それにしても「またか」という気がする。しかし、アメリカの対応は違っている。国連をはじめ世界の世論が「即時停戦」と呼びかける中で、アメリカだけが「停戦するな」と言い張っているのである。安全保障理事会の即時停戦決議にも拒否権を発動する執拗さである。 筆者は過去10年間にわたって、イスラエルとアラブ諸国との関係をテレビで見てきた。思い出されるのは、クリントン大統領時代のホワイトハウスでの光景である。今は亡きパレスチナ解放戦線のアラファト議長とイスラエルのラビン首相(当時)が、クリントン大統領を挟んで固い和平の握手をした。これでようやく中東に平和が戻るかと思った。この握手によって恒久的な平和を実現できなかったが、米大統領の両側に戦闘国の代表者がともに並んだ光景は忘れられない。 今はどうか。ブッシュ大統領はイスラエルに「安易な停戦はするな」と言っているのである。そして「ヒズボラのようなテロリストとの対話もありえない」と言っているのである。なんと言う変貌であろうか。ブッシュ大統領の指示を受けて飛び回っているライス国務長官は三日間で地球を二周するような忙しさである。それでも、イスラエルの首相とは面談できても、レバノンの首相との面談は拒絶された。 ヒズボラをテロ集団と断定するのが適切なのだろうか。ヒズボラは単なるテロ集団ではないように見える。イランでイスラム革命を起こしたアヤトラ・ホメイニ師の信奉者が、レバノン全域をイスラム教徒にし、異教徒であるイスラエルを追い出すことを目標に85年に作られた政治集団である。シーア派を主たる支持基盤としているが、レバノン議会に10%の議席を持ち、内閣に2議席を持っている正式の政党である。 レバノン内で、4つの病院、12の診療所、12の学校、二つの農業教育センターを運営する社会福祉・教育機関の側面も併せ持つ。特に、病院は安い診療料金で一般のレバノン市民に開放されており、ヒズボラのメンバーは無料で医療サービスを受けられる。こうした運営費用は、個人の寄付によって支えられているが、背後にはイラン政府からの手厚い援助があると見られている。 レバノン内でヒズボラへの支持はきわめて高い。在ベイルート調査機関の最近の調査によると、87%のレバノン市民がヒズボラのイスラエル攻撃を支持している。ヒズボラ支持率は六ヶ月前と比べて29%も上昇している。レバノン議会はキリスト教徒とイスラム教徒が半々占めているが、キリスト教徒の80%までもがヒズボラを支持しているのである。 米国政府はヒズボラをテロ組織と断定しているが、ヒズボラをテロとみなしているのは米国、カナダ、イスラエルの三カ国だけである。英国、豪州、オランダでは外部セキュリティ集団と位置づけ、EUとロシアにいたってはテロ集団のリストからはずしている。 米国市民の間では911以降、「テロ」と聞くだけで戦闘意欲が盛り上がるようになってしまったが、そもそもこの国には「孤立主義」があった。ヨーロッパ、中東等での地域の揉め事には超然としていたのである。世界の紛争を睥睨し自らが戦闘に乗り出すことを極端に嫌っていた。相手が戦争を仕掛けてこない限り、自らが望んで戦闘に出てゆくこともしなかった。第二次世界大戦でも日本に最初に攻撃させることに強く拘った。 だが、戦後の「孤立主義」は変貌した。60年代のベトナム戦争が例外の始まりだろう。だが、90年代のクリントン大統領の時代にコソボに派兵したときにはNATO派兵の形を取っている。しかし、911がアメリカ人の意識を変えてしまった。アフガニスタン、イラクに出兵したときには、躊躇なく先制攻撃を選んだ。そこにはかつての「孤立主義」の面影はない。アメリカはいま、最も好戦的な戦争当事国になったのである。 話をイスラエルに戻そう。最近の米国内の世論調査によると、アメリカ人の54%がイスラエルを支持している。アラブの支持者は11%と圧倒的に少ない。アメリカに住むユダヤ人人口は米国人口の3%でしかない。一般のアメリカ市民のイスラエル支持は、ホロコーストによって多くの同胞の命を失ったユダヤ人への同情もあるし、イスラエルが中東諸国の中で、デモクラシーを実現している数少ない国であることも影響している。 ユダヤ人の米国政府に対する影響力は絶大である。彼らの圧倒的多数が民主党支持者だといわれる。富裕家の多いユダヤ人層は、従来から民主党に多くの選挙資金を出してきた。だが、911以降に共和党を支持する層が増えてきたとも言われる。それが、いままた変化しようとしている。イラク侵攻策の手詰まりを反映して、再び民主党に回帰し始めているのである。 一例を挙げよう。有名なユダヤ人政治家にジョー・リーバーマンがいる。彼はコネティカット州選出の上院議員である。88年から18年にわたって上院議員の地位を保持し、2000年には民主党指名の副大統領候補になっている。大統領候補はブッシュに敗れたゴアであった。そのリーバーマンが民主党の新人候補に負けるのではないかと言われている。理由は、ブッシュのイラク侵攻を支持したためであると言われている。 第二次世界大戦でナチに180万人虐殺された彼らの心境は複雑である。アメリカ国民の多くがイスラエルを支持してくれることは有難いものの、米国自身が中東に暴力を持ち込んだことには反対をしているように見える。多くの同胞がナチの暴力によって殺されたことを思い返すと、暴力の応酬がとんでもない結果をもたらすことを肌で感じているのではないだろうか。 「ヒズボラが先に手を出した。悪いのはヒズボラだ。ヒズボラの拠点となっているレバノン南部を徹底的にたたき、彼らのロケットがイスラエルに届かない地点まで後退させる。その上で、国連の監視軍が間に入って緩衝地帯を形成する。」これがイスラエル政府と米国政府の考え方である。だが、こんな単純な判断でよいのか。米国内のユダヤ人は現政権のやり方に疑問を持ち出している。 アメリカは経済的にも軍事的にも世界の超大国である。超大国には超大国なりの身の振り方があるはずである。超大国が地域紛争の一方の当事国に加担し続けるとどうなるか。もはや、その国には紛争を調停する能力はなくなる。多くの国はそう見るだろう。ライス長官が地球を何周しようとも無駄である。 中東では現在、イランの核査察拒否問題という重要課題を抱えている。今回の紛争でイランの立場が強化されてしまった。アラブのテレビ各局は、ヒズボラの今回の軍事行動を「英雄」と称え、レバノン南部のカナで子供を含む一般市民に多くの犠牲者が出たことを、イスラエルの残虐行為として連日非難している。これに伴って、ヒズボラを背後で支えるイランの評価は大きく向上した。こうした情勢の中での、米国政府の対応はあまりにも単純幼稚であったように思う。ヒズボラの背後にイランがいるだけに、もっと慎重に対応しなければならなかったのではなかったろうか。 紛争調停能力を失った米国に代わって、フランスが調停に乗り出している。フランスがレバノンの旧盟主国であったとの特殊事情もあるが、フランスの地域紛争に対する柔軟な対応姿勢がこの国を外交の表舞台に押し上げたとも言える。軍事力を安易に行使する超大国に代わって、ヨーロッパの大国(英国を除く)が世界の平和実現を担う時代がやって来るのではないだろうか。アメリカが自らの威信低下によって失ったもの、それは指導力と信頼である。◆安藤茂彌氏◆高野連の規定では、公式戦に参加できるのは男子生徒に限られており、公式練習も慣例として女子の参加は認めていない。第80回選抜大会の開幕前に行われた甲子園練習では、山口・華陵高の女子選手がグラウンドでの練習ができなかった。フランス科学アカデミーが所蔵していた記録紙の音波を最新のコンピューターで解析、ようやく聞き取れるほどの歌声を約10秒再生したという。26日の報道発表で漏えいの時期や場所などを伏せた点を報道陣から批判され、増田次官は「みなさんの立場では(公表が)当然でしょうが、私どもの立場もある」と釈明した。【本多健】787は当初、08年5月に納入される予定だったが、1年近く遅れる見通し。このため、旧型機を使うことで、計画より燃費が悪くなったり、予定していた路線開設が遅れたりする損害が予想されるという。
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